「あなたの『優しい笑顔』と『温かい手』が、夫にとっても私にとってもいちばんの『治療』だったよ。最後まで見守ってくれてありがとう。」
突然ですが、あなたは『手当て』の語源を知ってますか?
患者さんの患部の痛みを取るために、信頼できる人がそっと手を当てる。
手を当てるだけでは直接痛みを取ることはできないかもしれません。それでも、その人の痛みに寄り添い、手を当てる。
これが、語源だそうです。(※他にも諸説あります)
まだ、現代のように医療が発達していなかった時代だからこそ、人と人との思い合いや触れ合いが、一番大切な治療だったのだと思います。
ただ、医療が発達した現代においても、最後は『治療』よりも『手当て』が必要な時も少なからずあるのではないでしょうか。
手当ての語源は他にも諸説あるそうですが、私は昔の人々の想いがこもっているこの語源が好きです。
編集長M
ご挨拶が遅れました。『夜ふかしナースのお悩み相談室』の編集長Mです。
私は以前、看護師専門の人材サービスに携わっておりました。
冒頭のお話は、以前に転職で悩んでいると相談にのった若手の看護師のエピソードです。(プライバシーに配慮し、設定などある程度の変更をさせていただいています。)
その方の旦那さんは、彼女が担当を受け持った終末期の患者さんでした。
ほとんど意識もなく、たまに目を開けても焦点があわず虚ろな目をしているのみ。
話しかけても反応はない状態でした。
お子さんがいらっしゃらないご夫婦で、奥さまがほとんどつきっきりで笑顔で話しかけ、看病なさっていたそうです。
今日は、夕焼けが綺麗ですよ。
あなたの好きな相撲がもうすぐ始まりますよ。
今日は、負けちゃいましたよ。
ただ、話しかけても何も反応がない旦那さんを看病している奥さまから、明らかに笑顔が消えていきました。
当時まだ看護師として駆け出しだった彼女は、自身の両親とそこまで年齢も変わらないご夫婦の姿を見て、涙が止まらなかったそうです。
何か自分でできることはないかと、彼女は考えました。
当時新人で忙しい中、時間を作っては旦那さんに顔を見せに行き、手を握りながら自分の子供の頃の話や、看護師になってからの体験など、何でも話したそうです。
そう、二人の実の娘のように。
おかげで、奥さまにも笑顔が増え、最後は笑顔で旦那さんを見送れたとのことです。
その時に頂いた感謝の言葉
「あなたの『優しい笑顔』と『温かい手』が、夫にとっても私にとってもいちばんの『治療』だったよ。最後まで見守ってくれてありがとう。」
この言葉を胸に、彼女は看護師としてつらいときも頑張ってきたそうです。
そんな患者さんと寄り添い、看護師として誇りをもって働いてきた彼女から出た言葉に、私は驚きを隠せませんでした。
『看護師を続けるのがつらいんです。』
『患者さんに向き合えない』
『もう、辞めたいと思ってます』
日本の医療制度は、世界でも最高レベルだと思われてますが、現場では想像を絶する過酷な環境を強いられている場合が、少なくありません。
患者さんのために必死に頑張ってる彼女のような看護師が、なんでこんなにつらい想いで、過酷な環境の中、心も身体もぼろぼろにならないといけないのか。
どうして、患者のために尽くしたいと願っている看護師が、辞めていかなければならないのか。
そんな看護師のみなさんの悩みを少しでも軽くするための相談室のような場所を作りたい。
そんな想いで、このサイトを立ち上げました。
現代の医療では救えない人々が、あなたの力を必要としています。あなたの笑顔が患者さんとご家族の明日を生きる力になります。
あなたが、また自然と笑顔でいられるようになる日がくるよう、少しでも力になれればと願います。
結局、彼女は勤務制度の整っている病院に出会う事ができ、今では笑顔で患者さんと向き合えるようになりました。
みなさんが、自信とやりがいをもって看護師として活躍できるように、心から祈っています。
『夜ふかしナースのお悩み相談室』編集部